うさぎをみるひとはみんないいます
 
 「うさぎとゆういきものはさびしがりやなんだ」
 
 「ひとりぼっちになるとしんでしまうんだよ」
 
 だからうさぎをすきなひとはせいいっぱいあいしてあげます
 
 「このこがよろこんでくれるのなら」
 
 「さびしいおもいなんてさせないからね」
 
 みんなみんなそういいます
 
 でもうさぎはほんとにひとりでさびしいとおもってるのでしょうか
 
 
 
 【うさぎ】
 
 
 
 「……だったらシズちゃんって、うさぎじゃないよね」
 「はぁ?」
 シズちゃんは眉をしかめる。
 「だってシズちゃんは正真正銘の寂しがり屋さんだし」
 「うっさいさん付けすんな気持ち悪ィ」
 「……寂しがり屋ってとこは認めるんだ」
 「……黙れ」
 そこは嘘吐いてもいいのに。嘘だって分かってるけど。
 俺が突然「君は寂しがり屋さんだよ」なんて言ったのにあんまり怒らない。
 それは、俺の言ったことがあまりにも図星すぎるからかな。
 「大丈夫、俺はシズちゃんが寂しがり屋さんなのはよぉーく知ってるから」
 今の俺は最高にニコニコした顔なんだろう。
 「何がどうなって大丈夫なんだよ」
 『君のことを知っていいのは俺だけだから』なんて答えは、心の中で言っておく。
 流石の俺でもそんなこと、本人を前にしては言えない。ちょっと照れちゃうしね。
 「第一、何がうさぎなんだ」
 黙ってる俺にしびれを切らしたのか知らないけれど、シズちゃんが聞いてくる。
 「三枚でどう?」
 「は?」
 職業柄、ちょっとふざけてみたら血管が浮き始めてた。
 このままだと俺が殴られるから、慌てて話す。
 「シズちゃん、知らないの?」
 「知らないから聞いてんだよ」
 「正論。ねえ、うさぎってどんな性格か知ってる?」
 殴られない程度に焦らして話す。
 「性格?そんなのうさぎによって色々あんだろ」
 「どうしたの?シズちゃんが正論ばっかり言うなんてさ」
 というか、そこは真面目に答えてはほしくなかったんだけどな。
 「うさぎって寂しがり屋さんだって、聞いたことある?」
 「…………あー……?」
 「あー、じゃないよシズちゃん」
 小さい子みたいに可愛い顔して。口半開きで首傾げて。
 「世間一般的には、結構有力な説なんだよ」
 「聞いたこと……あった気がすんな……テレビとかで」

 「でもそれ、嘘だよ」

 曖昧な記憶の中にいるシズちゃんを、とりあえず現実に戻して。
 「そう言われ続けてきたけど、本当は違うんだ」
 言われて、思われて、愛されてきたのもすべて人の思いこみ。
 「うさぎって、一匹一匹でちゃんとした縄張りを持ってるんだよ」
 当のうさぎは、一匹でいるのが普通の状態であるというのに。
 ただ一人で、一人の世界を守り続けているのが普通なのに。
 自分にとって普通である状況から離れさせられて「寂しがり屋」と
 言われるのは心底迷惑だろう。
 「だから寂しがり屋さんは、シズちゃんだけなんだよ」
 「はァ?」
 シズちゃんもシズちゃんで、己の領域を守っているけれど。
 でもシズちゃんは、もともと沢山の人に囲まれて寂しがり屋さんになったから。
 「じゃあね、シズちゃん。大嫌いだよ」
 俺の愛の言葉は大嫌い。シズちゃんなんか世界で一番大嫌いだから。
 だから、俺が立ち去った後のシズちゃんが俺のことを眺めてるのを確認する。
 なんて健気で可愛いんだろう。
 世界にひとりだけの、正真正銘の寂しがり屋さん。
 俺の大嫌いで愛してる人。 
 
 
  
 
 
 
 
 -----後書き。
 ガセ◎アを見て。シズウサって寂しがりじゃないんですよ。
 放送されたときから随分と時間が経ちましたけれど、メッセで某方とその話をしたので。
 あーわーわー、随分とシリアスに…!!はぁ。
 うさぎ。私が幼稚園から好きだった動物はうさぎです。
 唯一うさぎだけは「これはうさぎだ」と認識できる絵が描けます。(犬は猫になる)
 寂しがり屋じゃないのは結構ショックです……でも。
 うさぎだって一匹くらい「寂しがり屋」がいてもおかしくないですよね?
 そんなことを考えます。うさぎ可愛くて大好きだ……!
 
 よく見たら私、まんま某方の影響を受けてますね……!!
 
 06.01.07(01.14修正) けっぱ