「ヒーハハハハハハハ!」 いつものように始まるケリーさんのラジオ。 「知ってるか?潤って、暑いときは上半身裸で寝てるんだぜ!」 そうそれは、ミスアンラッキーが殺人鬼に攫われた日の事であった。 【にゃんにゃん】 「また雨霧か……!」 張が唇を噛みしめて言う。既に、潤はその場からエンジン全開で飛び出していた。 「雨霧……八雲さん」 美咲は、雨霧の腕に抱えられていた。 潤はまるで王子様とお姫様みたいだ、と思った。 そして、それと同時にほのかに嫉妬が自分の中にあることに気付いた。 「美咲を……返してください」 そしてまた、5回目くらいのやりとり。 バルルルルルル。バルルルルルル。潤の両手のチェーンソーは、鳴き声をあげる。 「なんとか今日も無事に救えた……」 気絶している美咲を、先程の雨霧のように抱えた潤は言った。 ここのところ、美咲ばかりが狙われている。だが、傷つけたことはない。 もしかしたら、雨霧は美咲が……? いや、そんなことはない。……と、思う。 自分に言い聞かせ、潤はやっと安心することができた。 「潤?」 はっとして、腕の中の美咲を見る。意識が戻ったようだ。 「よかった……」 心の底から安心すると、美咲は潤にありがとうと言わず……睨み付けた。 「えぇ……!?」 突然のことに動揺した潤は、何とか自分を落ち着かせる。 「ど……どうしたの?美咲……」 「ねぇ、潤……潤は、甘すぎるよ」 「え?」 美咲の言っている意味が分からず、潤は焦る。 「上半身裸で寝たりして……そんなの見られたら、襲われるよ!?」 必死の表情で言う美咲に、潤は固まった。 「な、何でそんなこと……!」 「さっきのラジオで聞いたの!」 そういえば。 ケリーさんがせくしーとかそんなことを言っていたような……。 「あ、そ、その……美咲ぃ……」 弱々しい声で言う潤に気付き、美咲は声を荒げるのを止めた。 「あの……えっと……そ、その、今は……冬だし…」 がくり。 「夏はどうするの!?」 当然の問いだ。今が良くても、これから先はどうするというのだろう。 そして潤は、爆弾発言をした。 「えぇっと……あ、美咲と一緒に寝ればいいでしょ……?」 しばし、沈黙&硬直。 「じゅ……潤……ご、ごめんね……」 美咲の顔が、みるみるうちに真っ赤に染まる。 潤は何故かが分からず、首をひねる。 それはお姫様とお姫様の、ほのぼのとした救出劇。 +++++++++++++++++++++ 「ぐっ……」 狗木は葛原を見下ろした。 「さすがの葛原さんでも、上司には逆らえませんよね……?」 自分の蹴りでうずくまっている男を、見下す。 男は部下だ。そして、英雄だ。 その男を、自分は蹴った。 英雄を蹴るのは、悪役しかいないかな。 そうとも思いつつ、また蹴る。 「ぐぅっ……く、狗木……」 恐ろしい形相で睨む葛原。 信じられない。俺が? 何故。俺に蹴られたのが? どうして。どうして俺が? 「別にそんなの、理由なんていらないのですがね……」 そして、コートの中から銃を取り出す。 安全装置を外す音が響く。 蹴られて動けないこの男のこめかみに、冷たいそれを当ててみる。 銃が大嫌いな男に、銃を。 「どう思いますか?大嫌いな拳銃で殺されると言うことを?」 そして狗木は、笑みを浮かべる。 それは決して貼り付けられた笑みではなく------心の底から来る、快楽の笑みであった。 -----後書き。 12月11日に開かれた白鷺さんの絵茶会で、12日に書きました。 ちなみに。橋の話はあんまり書いたことがないので、何を書けば宜しいか聞きました。 そして出たもの。 屈辱にまみれる狗葛(狗木が笑いながら腹に蹴りを入れて銃口を眉間に当てるくらい) 雨戌or戌雨・葛ケリ・潤咲・潤咲・潤咲・誠イリ・シャーロック受 なんと(潤咲の)多い事やら。でも八雲さんまだ書けそうになかったり……。 で、結局この2つになった訳です。 八雲さんとか、姉弟の話書きたいです……何回か読み直さねば。 05.12.12 けっぱ