突然太子の家に呼ばれて、僕はすき焼きを食べることになった。 ………なんだってあの人はいつも勝手なんだろう……。 夕飯を準備したところで呼ぶなんて、酷いにも程がある。 「ちゃっす妹子!もー遅いぞ!」 「いきなり呼び出しといて何言ってるんですか」 「全くもう!待ちくたびれてもう少しで生肉食うところだったじゃないか」 「勝手に食べて死んでください」 「ひ、ひどっ!!……ん?妹子、鳥肌立ってるぞ」 ……流石に僕だってこの時期にノースリは寒い。 「こんなの着せてるのは太子じゃないですか!」 「我慢してこそ偉くなるのだ!」 暫くして。 「……はあ……そういや、先程からジュウジュウ音がしますね」 「ああ!妹子があまりにも遅いから先に脂だけひいとこうと思って……」 その一言に鍋を見ると、天ぷらを揚げるときみたいな光景が広がっていた。 「いれすぎでしょう太子!天ぷらパーティだったんですか!?この馬鹿野郎が!」 「え、だって沢山引いた方が美味しいって、フィッシュ竹中さんが…」 「人のせいにするなこの馬鹿摂政!!」 火を止め、脂を捨てて仕切り直す。 「もー妹子はすき焼きを分かってないな!摂政に任せてプリーズ」 「あんたに任せたら全て駄目になるでしょうが……まあやってみてくださいよ」 「あーじゃあ卵取ってきて」 「僕の家じゃないのに!?」 ぶつぶつ言いながら卵を取ってくると、太子が肉をにこにこしながら焼いていた。 「やっきにくやっきにくうっれしいな!」 「すき焼きでしょう……はい卵」 僕は卵を手渡す。太子はスムーズな動作で、割った卵を鍋の中に。 「妹子はすき焼きを知らないのか?始めの肉は焼き肉として食べるのが常識だろう」 「んなわけないだろ!?……ってバカ太子!あんた卵焼き作ってどうするんですか!」 「だってそこに卵があるから」 「あんたは登山家か!!」 結局その後、僕はまともにすき焼きを食べることが出来なかった。 ……もう太子とすき焼きは絶対にしない。 |