突然太子の家に呼ばれて、僕はすき焼きを食べることになった。

………なんだってあの人はいつも勝手なんだろう……。
夕飯を準備したところで呼ぶなんて、酷いにも程がある。

「ちゃっす妹子!もー遅いぞ!」
「いきなり呼び出しといて何言ってるんですか」
「全くもう!待ちくたびれてもう少しで生肉食うところだったじゃないか」
「勝手に食べて死んでください」
「ひ、ひどっ!!……ん?妹子、鳥肌立ってるぞ」
……流石に僕だってこの時期にノースリは寒い。
「こんなの着せてるのは太子じゃないですか!」
「我慢してこそ偉くなるのだ!」

暫くして。
「……はあ……そういや、先程からジュウジュウ音がしますね」
「ああ!妹子があまりにも遅いから先に脂だけひいとこうと思って……」
その一言に鍋を見ると、天ぷらを揚げるときみたいな光景が広がっていた。
「いれすぎでしょう太子!天ぷらパーティだったんですか!?この馬鹿野郎が!」
「え、だって沢山引いた方が美味しいって、フィッシュ竹中さんが…」
「人のせいにするなこの馬鹿摂政!!」
火を止め、脂を捨てて仕切り直す。

「もー妹子はすき焼きを分かってないな!摂政に任せてプリーズ」
「あんたに任せたら全て駄目になるでしょうが……まあやってみてくださいよ」
「あーじゃあ卵取ってきて」
「僕の家じゃないのに!?」
ぶつぶつ言いながら卵を取ってくると、太子が肉をにこにこしながら焼いていた。
「やっきにくやっきにくうっれしいな!」
「すき焼きでしょう……はい卵」
僕は卵を手渡す。太子はスムーズな動作で、割った卵を鍋の中に。
「妹子はすき焼きを知らないのか?始めの肉は焼き肉として食べるのが常識だろう」
「んなわけないだろ!?……ってバカ太子!あんた卵焼き作ってどうするんですか!」
「だってそこに卵があるから」
「あんたは登山家か!!」


結局その後、僕はまともにすき焼きを食べることが出来なかった。
……もう太子とすき焼きは絶対にしない。




06.10.22(半分実話です。この後これの絵を描いてもらったりとすごく嬉しかった覚えが)