マフラーに耳当て。でもノースリーブ。あ、鳥肌発見。 吐息が白くなる季節だ。だけど僕は太子のせいで袖無し。凍えそうなくらい、寒い。 無意識にブルブルと体が震えているのに気付く。凍死するかも。 「えいっ」 大きく一回腕を振ってみて、寒さを紛らわせた。心なしかちょっとだけ、暖かくなった気がする。 「あ、猫だ」 道を行くと、金の瞳をした黒猫がいた。可愛い。 猫は好きだ。飼ったこともないけれど。ふわふわの毛並みや柔らかそうな体に触ってみたい。気持ちいいんだろうなあ…… 立ち止まって、しゃがむ。猫とばっちり目があった。 「猫やーい」 話しかけてみる。野良猫って懐いてくれるのかなあ……。 撫でてみようと手を伸ばす。 『シャーッ』 毛を逆立てて、猫に威嚇された。ギロッとこちらを睨み付けてきて……怖い。 ぶるりと心が震えた気がした。 「ご、ごめんよ猫…」 何故威嚇されたのかは分からなかったけど、早足で猫から遠ざかった。これ以上いたら、引っ掻かれていたかも知れない。 「なんでかなあ……」 はあ、と溜息を吐く。また寒さがこみ上げてきた。せっかく忘れてたというのに、また寒くなった。 別に攻撃しようとした訳じゃあないし、猫に嫌われるような覚えもない。 ああも一方的に拒絶されると、いくら相手が猫でも……傷つく。 「いーーーもこ!」 「あ、太子」 そのまま歩いていくとどこからかカレーの臭いが漂ってきて、太子が現れた。 「お前、鳥肌たってるじゃないか」 「太子のせいですよ……ノースリーブなんて着せるから」 「うらっ」 「わっ……」 ふわり、という感覚。瞬時にじわじわと暖かくなっていく。 「た、太子!?」 びっくりして振り返ると、半裸の太子が震えながら笑っていた。 「妹子が風邪引くと嫌だからな!摂政ぬくもりで暖まれ」 「……チクチクする…」 「なんだとーう!?ウール100%の気持ちよさが分からないって言うのか!へくし!」 怒った太子がくしゃみをした。やばい、この人ひょろひょろしてるから風邪ひくかも。 「太子、やっぱり着てくださいよ」 「いいよ、妹子着ていいよ」 鳥肌が立ち、血の気が引いて寒そうなのが分かる。あった、か い。 「……じゃあさっさと中に入りましょう。摂政が風邪なんか引いたら大変ですよ」 「こたつにでも入るか!」 「いいですけど頭から突っ込むのはやめてください」 「ギクーン!」 ギュ、と手を握られて。こたつでみかんを食べる冬。 猫は来ないけれど、太子といるほうがいいかもしれない。 |