そうこれは、ジャックランタンも作ってないけど、ハロウィンなんだ。
 
 「はぁーーーーーーっぴーーぃ」
 
 
 「はろぅぅぅぃーーーーーーーーーーーん!!」
 
 
 
 【rick or reat】
 
 
 
 
 「兄貴……ついにとても大事なモノを失ったんだな」
 「ヒャッホー、そんなことはねえぜ!」
 青いニットの少年の前に現れたのは、同じくニット----こちらは
 赤だが----を被った青年。
 何故か今日は、背中に黒くて大きな羽のようなものをつけていて、
 服装も黒い。
 「なんだそりゃ?」
 青ニットが顔をしかめると、楽しそうに赤ニットは言う。
 「今日はハロウィンだからな。なんか持ってなきゃ悪戯するぜ?
 まあ、お前が何か持ってるとは、思ってないわけだけどな」
 ニッ、と口の端を吊り上げると、弟にグイッと顔を近づけ、
 
 「トリック オア トリート?」
 
 無邪気な子供のように、言ってのけるのであった。
 
 
 
 「………兄貴、ちょっと待って」
 冷静に反応する弟は、ポケットを引っ繰り返し。
 「なんかあったか……?」と呟いている。
 一方。兄の心情。
 『ヒャッホーゥ!!真面目に反応するなんてお前可愛すぎ……!!』
 哀れ、弟。
 「あ」
 ガサゴソと探っていたポケットの中から手を取りだし、広げてみせる。
 そこにあるのは、黄色い包みのバターキャンディ。
 「ホラ」
 それを兄に突き出すと、「これも菓子だろ」と言う。
 「いやいや、俺としては何もなくて悪戯したかったんだけどなーあー」
 至極残念そうな兄。それでもバターキャンディは受け取る。
 包みを開けると、キャンディをしげしげと眺める。
 「俺、このキャンディってびみょぉーーな訳よ」
 「文句言うなら返せよ」
 「やだね」
 ぽいっ、と口の中に入れて舐め始める。
 「いきなり濃いだろ。これ。しかも後味が結構残るし」
 弟はこの文句しか言わない兄をナイフで切り刻もうかと思ったが、
 ネガティブになったのでやめた。
 そもそもいきなり人に菓子を請求するなど、おかしいのだ。
 そして請求されて素直に渡した自分も、おかしいのかもしれない。
 「でもよぉ、食った後はまたいつか今度食べてえって思うんだよな」
 どうやら噛んでしまったらしく、兄は早く食べ終えた。
 その様子を見て、弟は思う。
 
 ああ、そうなのかもしれない。
 この兄は最悪だと確かに思うのだが、一段落するとまた一緒に居るのだ。
 まるで、バターキャンディのように。
 
 「そうだな。俺も食べるか」
 弟はポケットに余りを探そうと、手を突っ込んだ。
 必死で手探りする弟に顔を近づけて、近づけて、近づけて、兄は--------
 
 0距離まで、近づけた。
 
 いや、正確には舌も入っているからマイナスかもしれないのだが。
 わずかに目を見開く弟の舌を己のそれと絡ませ、咥え、舐めた。
 「ホラ、キャンディの味移っただろ?」
 
 最後に、どうしようもない言い訳を残して。
 
 
 
 弟は何も言わず、兄とともにスケボーに乗って街を走っていった。
 その口に、バターキャンディの後味を残して。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 -----後書き。
 青ニット初書きです。ハロウィン青ニット。
 ニットからネコ耳生えたら可愛いでしょうね……!グフグフ。
 魔女は帽子をかぶれないので却下として(魔女ならアルスのコスがいい)。
 ちなみに、赤ニットは悪魔です。誰か可愛い二人を描いてくれないかなぁ…。
 まあとりあえず。ハッピーハロウィーン★
 05.10.25 けっぱ