「もう!帰るの遅いよ。シズちゃんの馬鹿!!」

  【シズちゃんと俺 きゃ☆あなたったらッ!】

  いつの間にか十一月になって、もうすっかり秋になったね。
  十一月って、なんだか切ない。
  訳もないのに胸が痛くなって。
  「はぁ……シズちゃん……」
  こうやって想い人の名を呼んで、毎日外を眺めながら溜息ばかり。
  見下ろす新宿の街は昼の都会で。また、溜息。
  「はぁ……誠二……」
  自分以外の声が聞こえてきたからびっくりして隣を振り返ると、同じような症状の人が。
  「波江さん。溜息吐くと幸せが逃げるよ」
  「あなただって吐いていたじゃない」
  「俺の幸せはシズちゃんだから☆」
  「私の全ては誠二よ」
  しばらく、無言で睨み合い。
  まあ、俺がシズちゃんのことで負ける訳がないけどね☆
  「……怖いなあ」
  「何よ」
  波江さんに睨まれると、たぶん園児は泣き出すよ?
  まったく、弟の事となるとしつこいんだから!もう。
  「誠二君もよく耐えたよね……」
  キッ、という音が聞こえて、波江さんの眼光20%増。
  ああこわいこわい。こわいから、シズちゃんに慰めてもらいにいこうかなv
  「じゃあ俺はシズちゃんに逢ってくるから」
  いつものコートを着て、睨んだままの波江さんを置いて池袋へと向かった。
  
  
  「さむ……」
  ひんやりした風が俺の頬をつついていって。
  手を擦り合わせたり息を吹きかけたりしても、なかなか暖かくはならなくて。
  そういや、十一月になってからシズちゃんに逢ってない……?
  今日って何日だっけ……えっと……にじゅう、に……?
  って、22日!?
  シズちゃんに22日間も逢ってないなんて……!そんな!
  俺、シズちゃん欠乏症で死んじゃうよ……。
  あれ、11月22日って……!もしかして!
  いい夫婦の日!?
  じゃあ、今日シズちゃんに逢ったら俺達っていい夫婦……!
  これは絶対に逢わなきゃだね☆
  「もう今日は逢うまで帰らないからねシズちゃゴフェッ!?」
  決心していたら、突然後ろから殴打された。
  「何が帰らないんだ?いーざーやーぁ」
  こ、この声は……まさか!
  「シズちゃん!?」
  後ろを振り返ると、浮かんだ血管にサングラス。バーテン服の…………シズちゃん!!
  「ここんとこ顔出さないと思ってたのによ」
  「やだ、シズちゃんったら毎日チェック入れてたの?やらしー」
  「んなことするかボケ」
  俺は毎日チェックしてるけどね☆
  「出てこないまま消えろ」
  「俺が消えると思う?」
  「消えろ」
  「俺が消えるくらいならシズちゃんはとっくに殺されてるよ」
  「消えろ」
  「ていうか俺が殺すんだけど」
  「消えろ」
  成立していない会話を繰り返す。もうシズちゃん、消えろ以外喋ってよ!
  「その前にシズちゃんが消えてよ」
  ナイフを取り出すと、シズちゃんがニヤリと笑って。
  その笑みにクラリと来ちゃう☆
  シズちゃんの持つ看板が動くのと、俺のナイフが動くのが同じ。
  だけどそのとき。
  「うぇっ……ひぐ、おかあさぁん、おとうさぁん……!」
  小さい子が俺に抱きついてきた。
  
  「「は?」」
  お互い、静止。
  戸惑っていると男の子が顔を上げて、「お母さん……じゃ、ない……?」
  いや、俺は明らかにお母さんじゃあないんだけど……あ!もしかして……
  俺とシズちゃんの子供……!?
  毎朝2人にご飯を作って、玄関先でいってらっしゃいのキス……!
  『臨也、なるべく早く帰る』
  『おかあさん、いってきます!』
  子供はパパ似かな?キャ☆俺ったら……!
  「ご、ごめんなさい!」
  男の子の声で現実に引き戻される。
  「……迷子か?」
  「うん……お母さんもね、こんなモフモフの着てるの……」
  「……そうか」
  ポン、と頭に手を置くシズちゃん。結構、子供好き……?
  「じゃ、お母さんとお父さん探す?」
  「おねがいします!」
  「とは言ったものの……」
  シズちゃんとふたりで親探しをすることになってしまった。
  「さて、どうしようか」
  
  とりあえず駅や公園といった大きなところに行くことに。
  「はぁ……にしても、迷子っているんだねえ」
  「今度からは親の手ェ握れよ」
  「全く。ってシズちゃん、あの子置いてる!」
  シズちゃんがスタスタ歩くものだから、あの子が俺達を見失っていたみたいだった。
  「ご、ごめんなさい!」
  あわてて救出に言ったら、半泣きだった。……シズちゃん、子育て出来るのかな……。
  「じゃ、俺達の手つなぎなよ。はぐれないでしょ?」
  しょうがないから手を差し出したら、にっこり笑って繋いだ。
  これくらい素直な子が欲しいよねv
  寿司屋の前を通ったら、サイモンが勧誘していた。
  「オー、シズオ、イザヤ」
  「サイモン」
  「2人ノ子供?」
  「そんなわけねえだろうが」
  「隠シ子?」
  「何でそんな言葉知ってるのさ……」
  「寿司食ベテ、かくまうイイヨー」
  サイモンがさあ入れとばかりに、がらりと戸を開けた。
  そこにはいつもどおり大将と、夫婦の客が居た。
  「おとうさん、おかあさぁん……!」
  「え?」
  男の子が駆けだして、夫婦に抱きついた。今度は本当に親みたい。
  ……ていうか、寿司屋に居たの……?親……。
  しかもお母さん、確かにモフモフだけど黒じゃなくて茶色いし……。
  「す、すみません!どうもありがとうございました!」
  「いえ」
  そんな言葉を交わして、親子は寿司を食べ出した。
  「よかったねシズちゃ……ってサイモン……!」
  シズちゃんに話しかけようと思ったら、サイモンに取られてた!
  チッ、サイモンめ!どこまで俺とシズちゃんの仲を邪魔したら気が済むのさ……!!
  もう……絶対しばらく寿司食べない!
  でも、あの子とシズちゃんと一緒に歩いてたら、親子に見えたのかな……?
  俺もシズちゃんの子供作りたいな。
  だから、シズちゃん。
  いつか夫婦になって、子供と一緒に遊ぼうねv


  (少しでもネタが出たら頑張って書きたいです☆)
  05.11.16 けっぱ  08.10.11後書き修正