「…平和島です」

  【シズちゃんと俺番外編 臨也君と俺―後半―】

  あの日以来俺は、南池袋公園へ通い続けた。
  何故かあの女を待っていた。阿呆みたいに、毎日待ちぼうけて。
  そして、待ち続けて一週間が過ぎた。
  …なんだよ。俺はずっと待ってるのに…。
  「あの…一週間前の方ですか…?」
  あの女だ。
  「はぁ…平和島です」
  待ち続けたのは俺の勝手だから、むかつく筋合いはない。
  「この間は、ありがとうございました」
  ものすごく深く頭を下げる。
  「いえ、むかついただけですから」
  よく見ればこの女、かなりの美人だ。長い黒髪で、少し怪しい感じがする。
  純粋って感じはしねぇな。でも、謝り方とかが気持ちいい。
  「あの、平和島さんは…折原さんのご友人なのですか?」
  「いえ…友人ではありませんよ」
  アイツが友人な訳がねえ。
  「そうですか…あ、このお団子、私が作ったのですけど…よろしければどうぞ」
  そう言ってカバンから箱を取り出す。
  「「あ…」」
  渡されるとき、手が触れあって思わず声を出してしまった。
  何故か女は俯いていた。
  「…熱でもあるのですか?」
  熱っぽい顔をしている。どうしたのだろうか。
  「だ、大丈夫です!///」
  「そうですか。お団子ありがとうございます」
  帰ってから食べよう。そう思ったとき。
  女が俺の右手を握った。
  「あ…?」
  何故か反応できなかった。しかもちょっと胸がうずうずした。
  「あの、握手です…」
  女はまた俯いた。やっぱり熱でもあるのだろうか。
  「あ、では…また、さよならっ///」
  そう言って走り去っていった。挙動不審な奴だ。
  でも、むかつきはしないんだよなあ…。
  ふと右手に違和感を感じて、右手を見たら、薬指に指輪がはめてあった。
  …くれたのか?これ。
  つけておくことにした。団子だけでは申し訳なかったのかもしれないし。

  家に帰って、団子を食べた。
  「…あれ?これ…」
  どこかで食べた味。もしかして…。
  「臨也の…?」
  臨也の作った団子の味だ。間違いない。
  だが、何であの女が作った団子が臨也の団子と同じ味なんだ?
  訳がわからねぇ…臨也を殴るついでに聞いてくるか。
  そう思ったとき、指輪が気になった。はずそうとしてもはずせない。
  あれ…右手の薬指に指輪…。ちょっと待て。
  臨也は、左手の人差し指に指輪をしていなかったか?
  柄が似ている。やはり臨也の差し金か…?
  そう思って家を出ようとドアを開けた。
  「シズちゃん」
  「何で手前が俺の家の前に…」
  家の前に、臨也が立っていた。
  「あの女の子に、指輪はめられたんだって?」
  「…そうだけどよ」
  「俺のと、おそろいだよね」
  やっぱりか。
  「ね、これ、重ねると同じにならない?」
  そう言って臨也は俺の左手を臨也の右手と重ねた。
  「臨也君は何がいいたいのかなあ」
  「シズちゃんとおそろいで、嬉しいなあと思って」
  すごく嬉しそうな顔で微笑むものだから、何故かまた、胸がどきっとした。
  「何で…」
  「ん?」
  「何でそんなに嬉しそうなんだよ…!」
  「だって、シズちゃんとおそろいだから」
  そう言ってまた微笑う。でも、殴る気にはならなかった。
  「これ、はずせないんだよ」
  「じゃあ、ずっとおそろいだね」
  また嬉しそうに笑いやがって。でも、怒れない。
  「…じゃあね、シズちゃん」
  「ちょっと待て」
  「何?」
  臨也が首をかしげる。
  「あの女はなんなんだよ」
  「…さあ。それは自分で調べてよね」
  そう言って、臨也はやっと俺の手を離した。
  臨也も、あの女も、いったい何がしたかったんだよ。
  それより、俺だ。
  何でこんな風に思ってしまうんだ?
  …でも、それはそれでいいかもしれない。
  あの胸がうずうずする、どきっとする感じも、嫌いじゃない。
  一人で臨也とおそろいだと、改めて思ったとき、笑ってしまったんだよ。
  だから、臨也君。
  別におそろいでも、俺はそんなに…嫌じゃないからな!
  …あ。団子のこと聞くの忘れた。


  (お団子話を延ばしてみました。しつこいですね。)
  05.3.26 けっぱ  08.10.11後書き修正