「…はっくしゅん!」

  【シズちゃんと俺番外編 ―馬鹿は風邪、ひかないんだよ?―】

  出会い系サイトの料金取り立て。この仕事で自分は何人殴ってきたのだろう。
  今日は遅くまで仕事をした。
  「…雨かよ」
  外は本降り。折り畳みを持っていたから、それを使った。
  ―今日の天気予報、降水確率0%だったけどな…。
  天気予報はあてにならないことが多い。
  黒い傘を差しながら帰っていたら、見覚えのある奴がいた。
  …覚えたくもねェけど。
  「シズちゃん」
  「いーざーやー君よォ、傘も差さずに何してんだよ」
  「…濡れちゃって。シズちゃんは女の子みたいにしっかりしてるね?」
  ぶちん。ガキじゃねえんだから、そんなことでキレないとは俺も思ってた。
  だけどよ、こいつに言われたらむかつく。それでぶん殴ろうと思って臨也を見たら…
  「…さむっ」
  身震いしているアイツの髪が、服が、肌に密着していて。
  何故かちゃんと見られなくなって。目をそらしてしまった。
  「どうしたのシズちゃん。あ、女の子みたいじゃなくて心は常に女の子なの?」
  …俺は臨也の目をしっかりと睨み付けて、殺そうと思った。
  「女くせえのは手前じゃねえかぁぁああああ!!」
  そう言って、近くにあったバイクを持ち上げたら。
  「わ、シズ、あ、…」
  そう言って、臨也が倒れた。

  今日はヤクザに情報を売ってきた。大変なことはなくて。
  ただ、帰ろうとしたら雨が降ってきた。
  「あーあ…傘持ってないや」
  まあ、いいよね。どうせならシズちゃんと相合い傘したいなあ…vきゃっ★
  そしたらシズちゃんと喧嘩して―
  「ん…ここ…」
  額には湿布らしきもの。頭の下には氷枕。何だか体がだるい。風邪をひいたのかな?
  トントントントントントン。
  不意にそんな音が聞こえてきて、布団から出る。
  「起きたのか」
  え…シズ、ちゃん?
  「手前が倒れたんだよ。今お粥作ってるから…」
  「なんで…」
  「…知らねェよ。寝てろ」
  もしかして、シズちゃんに看病されてる…?俺は今最高の気分。だるい…けどね。

  臨也が倒れて、すぐに抱き留めた。
  「っ…臨也っ!!」
  アイツの顔は赤くなっていて。苦しそうに呼吸していた。
  …こんなに弱られたら臨也じゃないみたいなんだよ。だから…
  臨也を抱えて、走って帰った。息が切れそうな位走った。
  「まずは着替えだな…」
  濡れた体のままじゃいけないと思い、俺の服を用意した。で、臨也の体を拭こうと…
  「…なっ…」
  普通に筋肉がついていて、また目を逸らしてしまった。…胸がおかしい。
  「シズ…ちゃん」
  はっとすると、臨也が寝言を呟いていた。何十分見てたのだろうか。
  体を拭いて、服を着せる。俺の服はダボダボだった。…でかかったか。
  その後お粥を用意してたら臨也が起きて―
  「美味いか?」
  「うん。ありがと」
  臨也はお粥をふうふう吹きながら食べている。味は大丈夫なようだ。
  「ごちそうさま。美味しかったよ」
  「そうか。…何か欲しいもんとか…」
  俺は臨也から食器を預かり、台所に持って行く。
  「シズちゃん、ポカリ欲しい」
  「ポカリ?」
  「そう、ちょっとぬるめで…ない?」
  ちょうどトムさんからポカリを箱ごと貰っていた。
  「ほらよ」
  臨也がごくごくと音を鳴らしながらポカリを飲む。口からポカリがこぼれ出て。
  「あ、うわっ」
  「お前、飲むの下手だな…」
  そう言ってタオルで拭いてやる。…よく濡れるやつだ。
  「…じゃあ、もう寝ろよ」
  「うん…おやすみ」

  シズちゃんのお粥は美味しかった。…料理、できないと思っていたけど…な★
  ドキドキしながら寝て、朝起きたらシズちゃんは居なかった。
  「仕事…かな」
  嫌いなのに俺の面倒見てくれて。我が侭も聞いてくれて。
  いつもそんなふうじゃないのに。そんな気分じゃないのに。
  嬉しかったよ。戸惑ったけれど、シズちゃんに看病してもらえたという事実が。
  「…恩返し、しなくちゃね」
  そして俺は―

  帰ったら、臨也が居なかった。慌てて探したら、テーブルの上に飯があった。
  『熱が下がったので帰ります。これはお礼だよ。温めて食べて。ありがとう。 臨也より』
  …何だこれはよォ。帰りやがって。気まぐれで、勝手。だけどそんな臨也だからこそ…
  明日からまた俺達は喧嘩をする。臨也はむかつくから。でも…いや、いい。
  「飯、食うか」


  (遅くなりました!ROSUTOさんのリクです。
  ちなみに抱え方はお姫様だっこ。趣味。趣味ですが何か。
  ROSUTOさんに限り転載、お持ち帰りOKです。)
  05.4.21 けっぱ  08.10.11後書き修正